2012年9月9日日曜日

私の見た開祖の神業 修正削除 移動

植芝盛平生誕百年 合気道開祖」(植芝吉祥丸編著、昭和58年講談社刊)の27頁に次のような記述がある。
「指一本で相手を動けなくする」(開祖道言抄)
「(略)すなわち、相手をその者の力の及ばぬ円外において抑えるならば、相手はすでに無力ゆえ、人差し指であろうと小指であろうと、指一本をもってこれを抑えられることになるわけじゃ。(略)」
小生は、この文章を読んで、50年近く前の本部道場での出来事を思い出した。
当時の合気道会の役員の任期は3年生の秋から4年生の秋まであった。ただ、私たちの一級上の上級生は二人しかおらず、必然的に2年生の私にもマネージャーの役目がまわってきた。稽古の指導も担当させられていたため、本部道場に通い、そこで習った技をそのままその日の稽古するということを繰り返していた。下級生を指導するというより、自分の稽古で精一杯であった。
本部道場の稽古では、2010年に逝去された菅野誠一8段(在ニューヨーク。当時、たしか4段で指導員であった)によく稽古をつけていただいた。菅野さんの稽古は、激しくはなかったがやはりプロである。厳しく、すぐ息があがる。夢中で30分も稽古したかと思い、時計を見ると未だ10分も経っていない。1時間の稽古が長く感じることはしょっちゅうで、やはり内弟子は強いなぁといつも思わされていた。
そんなある日、菅野さんとの稽古が終わった後だったか、翁先生が、見学者に技を披露されるためか道場に入ってこられた。先生は、菅野さんのそばにつかつかと寄ってこられて、左の小指で菅野さんの右手首をピタッと抑えられた。そして、菅野さんに離れるように仰った。ところがである。なんと、菅野さんはもがくけれども、手首は翁先生の小指から離れない。まさに、上記の翁先生の仰っていることが、私の目の前で起きたのであった。押されても押されないことは、なんとなく理解できるが、離れないのはどうしても理解できない。まるで、翁先生小指と菅野さんの手首がボルトで結合されたかのようであった。
翁先生の演武は、日比谷公会堂での全日本演武大会、全国学生合気道連盟演武大会や本部道場で何度も見る機会があった。見る度、翁先生の技に魅了されたのは言うまでもないが、指一本で相手を抑える技は、小生の目の前で行われただけに、今でも強烈に目に焼き付いている。

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